理系20代の日常レポート

「こんな情報が知りたい!」と自分が思ったことを本能の赴くままに書いてみようと思います。カメラ/旅行/家電/日常/科学関連の話題が多めです。

空気清浄機業界に騙されているぞ!空気清浄機の正しい選び方

f:id:microbiologist:20200119211818j:plain

2020年になりましたね。もうすぐ花粉症の季節ですから先日我が家の空気清浄機を新調しました。その際に各社空気清浄機メーカーのHPを見ていたのですが、誇張表現が酷いウェブサイトがいくつかあるのが非常に気になりました。

 

そこで今回は、普段クリーンルームやクリーンベンチで仕事をしている理系研究員の私が正しい空気清浄機の選び方をご紹介したいと思います。

 

加湿器機能は無いほうが良い

まず、空気清浄機に加湿機能は必要ありません。理由は「非常に不衛生だから」です。私が以前調べた中で本当に衛生的な加湿器は一つしかありませんでした。

 

空気清浄機に付属している加湿機能によって感染症が発生し、死亡する事故もしばしばニュースになりますよね。花粉症対策やニオイ対策のために空気清浄機を導入するのでしたらともかく、感染症予防のために空気清浄機を導入予定なのでしたら本末転倒です。

 

また加湿機能が付属するだけで、空気清浄機はボッタクリじゃないかと思うほど極端に値上がりします。そのため加湿機能の無い空気清浄機を選ぶ方が、コストパフォーマンスと安全性に優れています。加湿器は必要に応じて別途用意するほうが良いでしょう

 

HEPAフィルターである必要はない...かも 

「HEPAフィルター」というのをご存知でしょうか。 

HEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter) とは、空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用するエアフィルタの一種である。空気清浄機やクリーンルームのメインフィルタとして用いられる。

JIS Z 8122 によって、「定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されている。

 wikipediaより引用

 

要は、「直径0.3 μmの粒子10,000個をフィルターに通すと粒子0〜3個だけフィルターを通り抜けてしまうくらいの性能」ということです。10,000個の内、9,997個以上の粒子はフィルターに捕捉されますから、非常に高性能なフィルターです。

(ちなみに直径0.3 μmとは花粉の1/100くらいのサイズです。大腸菌は0.5 μm×4 μmくらいの円筒形でインフルエンザウイルスは直径0.1 μmくらいのサイズですから、直径0.3 μmとはウイルス以上、雑菌以下の大きさということです。)

 

高価格帯の空気清浄機はこのHEPAフィルターを採用していることが多いです。逆に低価格帯の空気清浄機はHEPAフィルターを採用していない事が多く、製品によっても異なりますが、例えば私が購入したブルーエアー社の低価格帯の空気清浄機Blue Pure 411 Particle + Carbonだと「集塵率99%」とメーカーHPに記載されています。

 

集塵率99%も集塵率99.97%も変わらないじゃないかと感じられるかもしれませんが、集塵率99%というのは「粒子10,000個をフィルターに通すと粒子100個だけフィルターを通り抜けてしまうくらいの性能」ということを意味します。このように記載すると、かなりの違いがあるように感じますよね。

 

ならやはりHEPAフィルターの方が良いじゃないかと思われるかもしれませんが、実際はもう少し複雑です。まず、空気清浄機は24時間常に稼働させることを想定した製品ですから、空気清浄機から排出された空気は再び空気清浄機に吸気されます。そうすると集塵率99%のフィルターであっても、2回フィルターを通過することで理論上、99.99%の集塵力を発揮するのです。つまり「粒子10,000個を2回フィルターに通すと粒子1個だけがフィルターを通り抜ける」ということです。

計算式は【(1-0.01×0.01)×100】です。

 

汚れた空気を一度だけしかフィルターに通せないような製品(一般家庭用だと掃除機、工業用だとクリーンベンチなど)であればフィルターは高性能であればあるほど良いのですが、空気清浄機は何度も空気をフィルターに通す性質の製品ですからフィルターの性能にはそこまでこだわらなくてもいいでしょう。

 

もちろん高性能に越したことはありませんから、お値段との相談になりますね。ただしやはり最低限、集塵率99% (正確には99.0%) は欲しいところ。98%が限度でしょう。98%を下回るフィルターはゴミ同然と判断していいです。

 

消臭力は期待しないほうがいい

ニオイ除去目的で空気清浄機を購入予定の方はご注意ください。空気清浄機のニオイ除去性能は一般的にかなり貧弱です。

 

そもそもニオイ物質というのは何かしらの有機物が気体となって空気中に分散しているものです。 その物質にもよりますが、大きさとしては0.001 μm前後くらいのものが多いでしょう。ウイルスなどよりも遥かに小さいです。そのため匂い物質は前述のフィルターではまず捕捉できません

 

そこで、各社ニオイ物質除去用のフィルターをもう1枚使用していることが多いです。よくあるのが、炭を使用したフィルターです。炭は細かな孔が空いており、見た目以上に表面積が大きいため、そこに匂い物質が吸着するというのですね。

 

そういう意味ではニオイの除去が可能ではありますが、ホコリの除去とは異なり99%以上の性能でニオイを吸着できるとはとても思えませんし、実際にどのメーカーHPにも具体的な数値は書いてありませんし、即効性のあるものではないはずですから効果を実感することは困難でしょう。換気扇を回す、窓を開けるなどして換気する方がよっぽど効果的です。

 

ちなみにタバコの白煙は空気清浄機で補足可能です。ただ煙と一緒に放出されるニオイ物質は素通りです。

 

空気清浄機は数で勝負

よく言われることですが、空気清浄機はいくら高性能でも、部屋の空気が対流していないと部屋全体を清浄することは不可能です

(クリーンルームメーカーの方から聞いた話なのでソースはありません、すみません)

 

解決策は2つあります。

  1. 扇風機を併用するなどして空気をかき混ぜる
  2. 空気清浄機を様々な場所に大量に分散設置する

 

無難なのは空気清浄機を大量に設置する方です。空気清浄機を設置する目的によっては扇風機が不向きな場合があります。花粉症対策や感染症対策の場合は扇風機併用でも良いでしょう。ただ室内に布製品がある場合、布製品からハウスダストが無限に飛散し続けますので、ハウスダスト対策やダニ対策の場合は、扇風機は置かない方が良いです。

 

また扇風機を使用すると床の花粉などを舞い上げることになりますから、一時的に空気の清浄度が下がることになります。扇風機を使用する場合は24時間稼働が必須となりますね。

 

そのためやはり空気清浄機を大量に設置するのがおすすめとなります。上述の通り、高性能な空気清浄機を設置する必要はありません。ご予算の中で低価格の空気清浄機を買えるだけ買うのが賢い買い方です。

 

例えば6万円の空気清浄機を1台設置しようと考えていた方は、1.5万円の空気清浄機を4台設置しましょう。その方が効果的なはずです。

 

ただ大量に設置するとなると部屋のコーディネートの問題がでてきます。性能を取るのか見た目を取るのかはお好みでどうぞ。

 

空気清浄機の値段だけでなくフィルターの値段も確認しましょう

メーカーによっては「フィルターの寿命は10年!」ということを書いてありますが、まず10年は保ちません。目詰まりや紫外線等によるフィルター性能の劣化を考慮すると2年が限度ではないでしょうか。(北欧のBlueair社は「24時間稼働の場合は半年毎のフィルター交換が必要。フィルター掃除は不衛生なので非推奨」と明言しています)

 

そのため定期的なフィルター交換、あるいは定期的な本体の買い替えが必要です。

 

メーカーが10年保つと言っているにも関わらず、10年保たないと弊ブログが明言するのは、メーカーとの見解の相違があるためです。メーカーはフィルターの水洗いが可能だと主張していますが、私はフィルターの水洗いが不可能であると確信しています。

 

確かに水洗い自体は可能なのでしょう。ただし、水洗いすることで、フィルターに捕捉されていた大量のカビや雑菌が水分を与えられることで繁殖を開始するので、フィルター全体がカビと雑菌に汚染されるようになります。

 

それでも良いなら10年保つのでしょうが、水洗いを繰り返すことで汚染フィルターと化していますから空気清浄機としての役割を果たしていません。カビが肺などに感染すると、致死率数十パーセントの深在性真菌症...になることは健常人だとほぼありませんが、カビアレルギーの原因にもなりますし、避けた方が無難です。

 

そうすると掃除機などで定期的に吸引掃除するくらいしかフィルターを長持ちさせる手段がないので定期的にフィルター交換することが必要なのです。

 

機種によってはフィルターが本体と同じくらいの価格だったりしますから、本体購入前に、フィルター単体のお値段も一応確認しておきましょう。

 

ちなみに工業用のクリーンルームやクリーンベンチだと1〜2年毎くらいにフィルター交換するのが普通です。...もちろん要求される清浄度によって異なりますけども。ちなみに上述の理由などから、フィルター掃除することはほぼありません、使い捨てです。

 

騒音にご注意

科学的な話でなくて恐縮ですが、空気清浄機はかなりうるさいです。そのため各社、運転モードを複数用意しています。

 

静音モード→普通モード→騒音度外視モード

 

というような感じで3〜4種類程度の出力であることが多いです。各社、静音モードはどれも静かなのでいいのですが、真ん中のモードの騒音が製品によって許容出来たり出来なかったりします。

 

静音モードで使用予定なのであればともかく、なるべくハイパワーで使用したいようでしたら、家電量販店などで試聴してきた方が良いでしょう。

 

一般的に騒音はフィルターやファンのサイズが大きくなれば大きくなるほど静かになります。すなわち【静かさ≒空気清浄機本体の大きさ≒価格】になる傾向がありますね。

 

ちなみに最強モードはどのメーカーのどの機種も騒音度外視で運転しますので、試聴するまでもなくウルサイです笑

 

結論:高い空気清浄機を1台買うくらいなら安い空気清浄機を買えるだけ買おう

ということで結論です。

【集塵率99%以上のフィルターを搭載した、なるべく安い空気清浄機を予算の限り大量に買う】

というのが弊ブログのオススメの購入方法です。

 

ただしハイパワーモードで運転させたい方は、大型の空気清浄機を購入する方が騒音の観点から幸せになれるかもしれません。また空気清浄機は24時間稼働させるのが正しい使い方ではあるのですが、短時間の運転を想定している場合はフィルター性能がモノを言いますからより高性能な製品を購入するのがベストでしょう。

 

【2020年1月現在の推奨機種】

Blueair Blue Pure 411

ブルーエア 空気清浄機 Blue Pure 411 13畳 Particle + Carbon 360度吸引 花粉 101436
 

 これは実際に私が3台購入した製品です。知る人ぞ知る憧れの空気清浄機メーカー、ブルーエア社のBlue Pure 411です。ブルーエア社の最も安価な商品ですね。

 

メーカーのウェブサイトには「HEPAフィルターである」とはどこにも書かれていませんが、メーカーに問い合わせてHEPAフィルターであることを確認しております

f:id:microbiologist:20200120222213p:plain

さらに360度全周から吸気して上部に排出する構造のため、見た目以上にフィルターサイズが大きいことが購入の決定打となりました。

 

フィルター価格は定価で3000円です。高性能高価格なイメージのあるブルーエアー社にしてはランニングコストが非常に優れています。

 

ちなみに運転モードは3段階ありますが、2段階目からすでにうるさいのでそれだけご了承を。弱モードだと騒音は全く問題ないです。

f:id:microbiologist:20200119211850j:plain

サイズ感がわかるように隣に1.5Lペットボトルを置いてみました。
 

SHARP FU-○50シリーズ

 

Blue pure 411と同じく、2万円を切る低価格帯であるにも関わらずHEPAフィルターを搭載した空気清浄機です。上記リンクのFU-L50は2019年10月に発売された新製品で、2020年1月現在は3万円程度の価格となっているため、型落ちの旧世代製品を購入するのがおすすめです。

 

FU-H50は2017年10月発売の2世代前の機種になります。

 

FU-J50は2018年9月発売の1世代前の機種になります。

 

FU-H50、FU-J50、FU-L50のいずれも全く同じフィルターを搭載していますので、空気清浄能力はほぼ変わらないと考えられます。見た目もほとんど変わりませんのでどれを選んでも良いでしょう。

 

集じんフィルターは定価で4400円です。ただし脱臭フィルターも定期的に交換したい場合はさらに追加で定価4000円が必要となります。脱臭を全く重視していない場合は、脱臭フィルターの交換頻度を下げても良いかもしれませんね。

f:id:microbiologist:20200119202411p:plain

 

なおシャープの空気清浄機にはもう一つグレードの低いFU-○30シリーズがあるのですが、こちらはHEPAフィルターではないフィルターであること、具体的な空気清浄能力がメーカーHPに記載されていなかったことから、おすすめ機種より除外しました。

 

ちなみにプラズマクラスターがどうこう書いてありますが、エセ科学ですから信じる必要はありません。

 

象印 PU-HC35

象印が唯一発売している空気清浄機です。フィルターはHEPAフィルターではないようですが、メーカーHPを確認するとおおよそ問題ない性能を有しています。

f:id:microbiologist:20200119203247p:plain

ニオイ除去については弊ブログの主張とほぼ同じことを主張しており、誇大広告な内容が全く見当たらないことから個人的に最も好印象なメーカーです。見た目のデザインが古臭いのは否めませんが、今回ご紹介した機種の中で最も安価ですので、コストパフォーマンス重視の方は象印の空気清浄機がオススメです。

 

なおフィルターは定価で5000円です。ランニングコストも悪くありませんね。本体自体が非常に安いので、フィルター交換でなく本体交換するという手も使える価格帯です。

 

さいごに

今回は、仕事柄、空気清浄にちょっと詳しい理系博士のげがんげんが空気清浄機をご紹介させていただきました。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

ちなみに花粉症でお悩みの方は、空気清浄機以外の科学的知見に基づいた花粉症対策方法も弊ブログでご紹介していますので是非参考にしてみてください。