あまり需要が無いのか、商品ラインナップが少ない32インチ前後の4Kモニター。でも個人的には4K解像度のPCディスプレイであれば32インチがベストだと思うのです。27インチ4Kモニターは解像度に対して小さすぎますし、40インチまで大きくなるとさすがにPC用途としては大きすぎると感じるためです。さらにPCだけでなくゲーム用途としても必要最低限の大きさは確保出来ています。
そこで今回は2018年5月現在の、色域の優れた写真編集に適した32インチサイズのノングレア4Kモニターを値段の安い順に紹介したいと思います。やはり値段と性能はおおよそ比例していますので、自分の求める性能と価格が釣り合った良い機種を選びたいですね。
BenQ EW3270U
2018年5月現在は6万円弱くらいの価格です。また正確には31.5インチです。写真向けモニターに限らず、32インチ4Kモニター全体の中でも最廉価な製品の一つです。写真編集に適していないとは言いませんが、視野角の狭いVAパネルですし、色出力を自分で調節できる『カラーマネージメント機能』もありませんから本格的な写真向きディスプレイとは言えません。
とはいえデジタルシネマ映写向けの色空間『DCI-P3』を95%カバーしていますので一昔前の機種よりもはるかに色再現性は高いです。最近流行りのHDR10にも対応しています。
また店頭でPS4に接続された本機種を触ってきましたが、私程度のアマチュアレベルでは特に遅延を感じることはありませんでした。値段の割に何でも最低限以上にこなしてくれますのでコスパは非常に良好です。(本当に私はアマチュアレベルですので、本格ゲーマーの人はあまり参考にしないでくださいね^^;)
正直「プロフェッショナル用途でなければこの機種で十分なのでは」と思わなくもないですが、以下この機種を凌ぐ性能を持つモニターを紹介していきますので、自分にとって最良の機種を選んであげてください。このEW3270Uを基準に、さらにどれだけの追加機能が必要なのか考えていけば自然と購入すべき機種が見えてくるということです。
Acer BM320bmidpphzx
2018年5月現在は10万円前後くらいの価格です。Acerブランドの中で「プロフェッショナル用」と位置付けられていることや販売戦略等の都合(?)もあるためか、日本エイサーのHPには本機種の記載がありません。そのため日本での知名度はかなり低い機種です。
しかし写真向けと言えるIPSパネル(視野角が広い)を有し、かつ写真向け色空間『AdobeRGB』を100%カバーした上で最大コントラスト比1億:1を実現しています。10万円を切ってこの色域表示性能は驚異的です。
問題はプロフェッショナル向けとして売り出していますが、カラーマネージメント機能についての記述がAcerの公式HPのどこにも無いことです。海外のレビューサイトを見ているとカラーキャリブレーション出来るような記載がありますが、詳細については記載無しですので『i1Display Pro』のようなキャリブレーションツールには対応していない可能性があります。...すみません、調べに調べたのですが結局どっちなのかわかりませんでした...。実店舗に展示品も置いていなくて...。
ということでカラーキャリブレーションを行う予定のない人にはベストな機種かもしれません。またベゼルレスなのはスタイリッシュでカッコいいですね。
LG 32UD99-W
2018年5月現在は11万円前後くらいの価格です。正確には31.5インチです。値段的にも性能的にも上記のAcer BM320bmidpphzxと同クラスに位置しているといえる機種ですね。
写真向けと言えるIPSパネルを有している点はBM320と共通ですが、写真向け色空間Adobe RGBのカバー率についての公式情報はありません。公式にはデジタルシネマ映写向けの色空間『DCI-P3』を95%カバーしているとの情報のみです。ちなみに他ブログの情報ではAdobe RGBのカバー率は83.7%だったそうです (個体差があるとは思います)。本格プロフェッショナル向けとは言えませんが、アマチュア写真家レベルだとこれくらい色再現性を確保出来れば十分ではないでしょうか。基本となる色空間『sRGB』は当然99%以上カバーしていますし。
Acer BM320bmidpphzxと比較した際に優れている点はカラーマネージメント機能を有している点とHDR10対応である点です。カラーキャリブレーションができますから自分でプロファイルを定期的に作成すれば、常にモニターの性能をフルに正確に引き出すことができます。
また本機種のHDR10はかなり評価が高く、PS4などのHDR対応ゲームでは臨場感のある映像が楽しめるようです。HDR抜きにしても垂直走査周波数60Hz、応答速度5msと必要最低限の性能を有していますからゲーマーからの総合評価も高いですね。
色空間の広さにこだわるならAcer BM320bmidpphzxですが、バランスよくゲームも写真も映像も楽しみたいという方は本機種を購入すると幸せになれると思います。あとは細かい点ですが、Acer BM320bmidpphzxは上左右の3辺がベゼルレスで、LG 32UD99-Wは上下左右の4辺がベゼルレスという違いもあります。
実は私が購入を考えている機種筆頭ですので、もし購入した場合は改めてレビューしたいと思います。10万円を下回るのを数か月待っているのですが、いつまで経っても10万円を下回りませんね...^^;
(追記)いつまで経っても10万円を下回りませんが、とうとう購入しました!レビュー記事も併せてどうぞ!
ASUS PA329Q
上記で紹介した機種よりも一段階価格が上がりました。2018年5月現在は17万円前後くらいの価格です。この価格帯になるとプロフェッショナル用途に耐えられる性能になってきます。
- 写真向けといえるIPSパネル
- Adobe RGBカバー率99.5%
- DCI-P3カバー率90%
- カラーマネージメント機能アリ
写真家にとって重要な色空間であるAdobe RGBを99.5%カバーした上で、カラーキャリブレーションが可能となっています。この価格帯の写真編集向けディスプレイともなるとカラーマネージメント機能搭載は当然なのですね。
本機種はさらにそれだけでなく画面の色ムラと輝度ムラもある程度調節できます。この価格で画面全体の均一性補正機能があるのは衝撃的です。
設定をいじることによりコントラスト比を通常の1000:1から1億:1に拡張できるのも良いですね。写真編集ではむしろ色の破綻が起きる可能性がありますが、ゲームなどのその他用途であればメリハリのある映像を楽しめます。
プロフェッショナル用途に全振りしていますので、上記の安価(?)な機種に搭載されていたHDR機能はありませんしベゼルレスでもないのが、他機種と比較したときのデメリットでしょう。
なお工場出荷時にカラーキャリブレーションを実施していることを明言しています。流石です。
Dell UP3216Q
2018年5月現在は16万円前後くらいの価格です。正確には31.5インチです。微妙なサイズの違い以外は上記ASUS PA329Qとほぼ同等性能です。
- 写真向けといえるIPSパネル
- Adobe RGBカバー率99.5%
- DCI-P3カバー率87%
- カラーマネージメント機能アリ
ということです。HDR機能が無くベゼルレスでない点もASUS PA329Q同じです。ASUS PA329Qと異なり、「色ムラ、輝度ムラを調節できる」という機能は無いようです。値段からすると妥当な性能というところですね。
高評価ポイントとしては、ドット欠け補償を標準としている点が挙げられます。
プレミアムパネル保証について
プレミアムパネル保証(輝点ゼロ保証)とは、液晶モニタのパネル上に"輝点"のピクセル欠陥が1つでも見つかった場合、無料で代替品に交換するサービスです。
デルは、プレミアムパネル保証をデルデジタルハイエンドシリーズ各モニタ製品に標準で提供します。また、本保証の有効期間はモニタ本体の保証期間(有償により最大5年間)と同じです。
万一、"輝点"と思われるピクセル欠陥が見つかった場合は、デルテクニカルサポートにて診断を行いますのでご連絡ください。
(液晶画面の背景が白色に対し、常時黒く表示されているピクセルは、輝点ではなく黒点になります。黒点は本保証の対象外となりますので、あらかじめご了承ください)
さらに故障時に『良品先出しサービス』を行っている点も高評価ですね。今回紹介しているモニターのメーカーは全て海外メーカーです。海外メーカーに修理を出した場合、1ヶ月以上音沙汰無しなことがよくありますから、とてもいいサービスだと思います。(私は昔、BenQにモニター修理を依頼してモニターが帰ってくるまでに2ヶ月かかりました。海外メーカーだとそれくらいが普通だということです。)
このデル製モニタは3年間保証、良品先出しサービス※1の対象のため、3年間のハードウェア限定保証の期間内であれば、必要に応じて翌営業日までに代替モニタを出荷いたします※2。
Dell HPより
とはいえ、ASUS PA329Qがコスパに優れすぎているので「Dellが好き!」「モニターの性能よりもサポート重視!」のような特別な理由が無ければ積極的に選ぼうとは思わない機種ですね。
なお工場出荷時にカラーキャリブレーションを実施していることを明言しています。流石です。
BenQ SW320
2018年5月現在は20万円強くらいの価格です。正確には31.5インチです。この価格帯の本命と言える機種ですね。
上記で紹介した同価格帯のASUS PA329QやDell UP3216Qとほぼ同じスペックを持っています。
- 写真向けといえる、視野角の広いIPSパネル
- Adobe RGBカバー率99%
- カラーマネージメント機能アリ
差別化ポイントとしては、純正の遮光フードが標準で付属することと、写真現像のサポートとなる細かい機能が付いていることです。
写真現像のサポートとなる『細かい機能』の一つがモノクロ表示機能です。
写真をモノクロに仕上げたいときに、ソフトウェアの方でいちいちモノクロにしなくても、モニターのボタン一つでモノクロ表示してくれます。これによりモノクロ仕上がりを簡易的に確認することが可能となります。
またピクチャーモードを一瞬で替えたりなど、色々出来るボタンがモニター下に配置されています。これは便利ですね。
モニターアームを用いる場合でも、このボタンは有線でつなぐことで問題なく運用できますのでご安心ください。
ちなみに画面ムラの補正機能はありません。先日『CP+2017』というカメライベントに参加した際に、BenQスタッフさんに聞いてきましたので間違いありません。スタッフさん曰く「画面ムラ補正機能を搭載したらこの価格では売り出せない」とのことでした。画面均一性補正機能を捨てて、安価な価格に収めているのですね。
ちなみに工場出荷時にカラーキャリブレーションを実施していることを明言していませんが、他ブログ情報によると問題なくカラーキャリブレーションを実施しているようです。
さいごに
ということで写真やカメラが趣味な人向けに4K32インチモニターを紹介しました!
本当にプロフェッショナルとしてやっていきたい人は、最高機種の称号を欲しいままにしている「EIZO ColorEdgeシリーズ」に手を出してみるのもいいですね。さすがにアマチュアレベルの私が語るのはおこがましいので、今回は紹介をやめておきます笑
モニターの買い替えを検討されている方でしたら、正直どのモニターを購入されても後悔はないと思います。それくらいここ数年でモニターの表示性能は上がっています。
「ゲームにも使う予定があるのか」「HDRは必要なのか」「カラーキャリブレーション機能は必要なのか」この辺りについて考えると、ベストな機種がきっと見つかるはずです。機種選びって本当に楽しいですよね!そのお手伝いが出来ていれば幸いです。