理系20代の日常レポート

「こんな情報が知りたい!」と自分が思ったことを本能の赴くままに書いてみようと思います。カメラ/旅行/家電/日常/科学関連の話題が多めです。

理系博士イチオシの「舌下免疫療法」は花粉症を完全に治すことのできる唯一の治療法

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「医療用医薬品 (処方箋が無いと貰えない薬) は大っぴらに宣伝してはいけない」と言う法律に阻まれてほとんど周知されていませんが、2014年からスギ花粉症を完全に治すことができる薬が発売されているのをご存知でしょうか。

 

現在、花粉症を発症している日本人が服薬している薬はほとんどが抗ヒスタミン薬です。この抗アレルギー薬は鼻水などの症状を抑えるだけ、すなわち症状を軽減させる効果しかありません。

 

この対症療法とは全く異なり、花粉にそもそも反応しないようにしようというのが今回ご紹介する舌下減感作療法 (ぜっか•げん•かんさ•りょうほう) です。馴染みがない単語が並んでいるので、舌下免疫療法 (ぜっか•めんえき•りょうほう)アレルゲン免疫療法などと呼ばれることもあります。

 

メディアやインターネット上でよく取り上げられるような胡散臭いモノではなく、臨床試験つまり人体実験を経て効果が証明された、紛れもない医療用医薬品です。

(英語ですが臨床試験の結果はこちらから確認できます)

 

今回はこの舌下免疫療法についてその原理と、どうやったら処方してもらえるのかと、その費用についてご紹介したいと思います。

 

舌下減感作療法のご紹介

まず最初にこれだけは注意させてください。

 

舌下減感作療法は医師の指導なく行うと命の危険があります。必ずその旨を理解した上で医師の指導の基、自己責任で正しく行なってください。

 

では舌下減感作療法のご紹介です。

 

舌下減感作療法は噛み砕いて説明しますと「スギ花粉エキスを毎日摂取することでスギ花粉に慣れてしまおう」というものです。体が慣れてしまえば、スギ花粉を吸入してもアレルギー反応が起きなくなるのです。これが現在の医学においてアレルギーを完全に克服することが可能な唯一無二の方法です。(とはいえ、アレルギー物質を血中に暴露し続けることでなぜ体が慣れるのかについては不明な点が多いみたいですね)

 

具体的には、「1日1回3~5年間、毎日、舌の下(裏側)に花粉エキスを数分間置いて、花粉成分を血中に移行させる」という方法を行います。舌下には毛細血管が集中していますので、舌下にスギ花粉エキスを置くことでスギ花粉成分は胃腸を介さずに速やかに血中に移行します。

(ちなみに毎年の花粉症シーズンで花粉に大量に暴露されても体が慣れないのは花粉成分が血中に移行しないからだと考えられます)

 

なお3~5年間服薬を継続すると投薬終了で、それ以降も効果が持続するといわれています。とはいえ正しく治療が行われると、初めての花粉飛散シーズンから症状改善が期待できます。

 

私は服用3か月後にスギ花粉症シーズンを迎えましたが、2月27日時点で完全に無症状です。

 

ただしインナーマスク併用です。インナーマスクはこちらの記事からどうぞ。

www.rikei20.com

 

副作用がキツそうなイメージだが...?

スギ花粉エキスを摂取し続けるということで「治療中は花粉症の症状が出続けるのでは?」と不安になられていませんか? 実際にはほとんど問題にはなりません。なぜならスギ花粉によるアレルギー反応は局所反応だからです。

 

ほとんどの人は鼻と目に花粉症の症状が現れますよね。これは花粉がそこに直接接触するからです。一方、舌下減感作療法の場合は口と胃腸に花粉が接触することになりますので、普通これらの症状は現れません。

 

ただしだんだんとスギ花粉を体に慣らしていくという性質上、最初の1ヵ月程度は体に何らかの不調が出る場合もあるようです。私も2018年11月から治療を開始しているのですが、治療開始4日目に軽い下痢になったのを憶えています。私はリンゴアレルギー持ちで、リンゴを食べると必ず下痢になるので、どうやらアレルギー物質を胃腸に入れてしまうと下痢になる体質のようです。

 

ちなみに臨床試験では、口内浮腫、口内炎、喉の刺激、頭痛、口内掻痒、耳掻痒が確認されたとのことですがいずれも軽症だったそうです。

 

アナフィラキシーにだけ注意 (?)

危険なのはアナフィラキシーです。「スズメバチに2回刺されると全身に急激なアレルギー症状が出て死ぬ」という話を聞いたことがありませんでしょうか。これは、1回目のハチ毒を摂取することで体がハチ毒に対する過剰な免疫反応準備を行ってしまい、2回目のハチ毒で過剰な全身性の免疫反応を起こすことで起こります。

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鳥居薬品HPより抜粋

 

舌下免疫療法もアナフィラキシーが出る可能性があり、命の危険がありますので舌下免疫療法は必ず医師の指導に従って実施してください。

 

とはいえ臨床試験の結果によると、241名の患者に1年超投与しても全身性アナフィラキシーが現れた患者は一人もいなかったとのことでしたので過度に恐れる必要はないでしょう。そもそも本治療でアナフィラキシーが出るような人は花粉症シーズンに花粉を吸入してアナフィラキシーを起こしているはずですよね。

 

どうやったら処方してもらえるの?

本治療は特定の病院で受けることができます。

www.torii-alg.jp

こちらのリンクは、舌下免疫療法の薬を販売している鳥居薬品のHPです。このリンクから最寄りの対応病院を検索することができます。

 

病院を決めましたら「スギ花粉の舌下免疫療法を行いたいのですがよろしいでしょうか」と電話するなり、病院に直接行くなりすれば後は流れで何とかなるでしょう。

 

【注意】花粉症シーズンに治療を開始することができない

舌下免疫療法ですが、残念ながらスギ花粉が飛散している時期に治療を開始することができません。安全面を考慮して、スギ花粉飛散終了(5月くらい?)~11月末の期間に投薬を開始する必要があるのです。

 

そのためモチベーションが高くないと治療開始できないというデメリットがあります。スギ花粉症の症状が何も出ていない夏~秋にかけて、スギ花粉症のために病院に行くだけのやる気を出せるか、それが最も重要です。

 

薬は液体と錠剤の2種類から選ぶ

2019年3月現在、スギ花粉の舌下免疫療法用の薬にはシダトレンという液体の薬とシダキュアという錠剤の薬が発売されています。

 

シダトレン (液体)

シダトレンは1度の通院で1ヶ月分の薬を処方してもらえるのが最大のメリットです。一方、最大のデメリットは冷蔵保存しなければならない点です。鞄に入れっぱなしにしておくことは出来ないですし、外泊するような場合に対応に困ります。

 

薬液を舌下 (舌と下アゴの間) に入れて、2分間保持した後、飲み込みます。

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このような感じに個包装になっています。絞り出さないといけないのでかなり不快です。

2020年1月追記:下記のシダキュアの発売に伴い、シダトレンは販売終了しました。

 

シダキュア (錠剤)

シダキュアは常温保存できる点が最大のメリットです。一方、最大のデメリットは新薬扱いのため、安全性の観点から1度の通院で2週間分の薬しか処方してもらえない点です。2週間ごとに通院する必要があります。

 

ただし、長期処方が2019年6月 (だったと思います) に解禁されますので、それ以降でしたら1か月処方が可能です。2019年6月以降はシダトレンを選ぶメリットは皆無ですね。私も現在シダトレンを服用していますが、6月になったらシダキュアに変更する予定です。

 

ちなみに薬液を舌下 (舌と下アゴの間) に入れて、1分間保持した後、飲み込みます。

 

効かない人もいることを理解しましょう

舌下免疫療法は残念ながら全ての人に有効というわけではないようです。それは体質的な問題であったり、様々な要因が考えられます。

 

例えばハンノキという樹木をご存知でしょうか。ハンノキはスギ、ヒノキ花粉飛散時期と全く同じ時期に花粉を飛散させます。スギ花粉症だと思っていたらハンノキ花粉症だった、という場合はこの治療法は無効です。

 

ヒノキなどの他の花粉症には全く効かない...らしい

私も舌下減感作療法を始めてからまだヒノキ花粉を経験していないので、ハッキリしたことは言えませんが、どうやらスギ花粉に対して舌下減感作療法を行っても、ヒノキ花粉などの他の花粉症には全く効かないとのことです。

 

費用はどれくらい?

シダトレンを服用している私の治療費をご紹介したいと思います。なお保険適用ですので3割負担での計算です。また病院によって金額が多少違うはずですので、その点はご了承ください。

 

まず初回に本当にスギ花粉症なのか確定診断するための血液検査を行います。これが初診料も含めて7500円でした。

 

その後、約1ヶ月毎に通院し、毎回35日分の薬を出してもらっています。その際の診察および薬の代金はいつも合計2700円前後です。

 

つまり、初年は年間35000円、翌年以降は年間28000円程度必要ということです。治療完了までに10万円前後かかる計算ですね。

 

スギ花粉症を根治するために10万円を出せるかどうか、しっかりと判断しましょう。

 

最後に愚痴【メディアで紹介されている商品は科学に基づいていない】

ということで舌下減感作療法をご紹介しました。本当は数年後にでも記事にしようと思っていたのですが、服用3ヶ月でスギ花粉症がほとんど現れなくなって驚愕したので急遽記事にしてみました。

 

最後に助言を。

 

メディアやインターネット上に溢れている花粉症対策グッズはかなり怪しい製品が多いです。例えば「この商品を食べれば花粉症が軽減されます」などと謳っている商品・食物はほとんどが科学的な知見に基づいていないパチモン商品です。広告業界はお金で動いていますから、仕方ないといえば仕方ないのですが...。

 

とにかく私が伝えたいことは「変な商品なのか、ちゃんと科学的根拠のある商品なのかしっかりと見極めて買いましょう」ということです。舌下減感作療法は紛れもなく本物です。

 

それではアレルゲン免疫療法で素晴らしい人生を謳歌できるように祈っております。