理系の学生さんやその親御さんならご存知かもしれませんが、今の時代、研究開発などの典型的な理系職に就職しようと思うと、大学よりさらに上の『大学院の修士課程 (決して博士課程ではないです)』修了がほぼ必須と言っても過言ではありません (もしくは6年制の大学卒業)。
ただ6年もの期間、大学あるいは大学院に通うことは金銭的にかなりの負担を強いられますよね。正直我が子が6年も大学に通うのは想定外だった、という親御さんもいらっしゃると思います。
一方、学生さんの立場からみても、研究熱心な研究室・教室に配属されると、ブラック企業も真っ青な『研究のためだけに生きる生活』が待っているため、アルバイトで生活費、娯楽費を稼ぐことが出来なくなる可能性があります。
そのような時に有用な選択肢の一つとなるのが日本学生支援機構の奨学金制度です。この日本学生支援機構の奨学金には、ほとんど周知されていませんが返還免除制度があります。ある意味では「学生の本分である学業を遂行することでお金を稼げる制度」ですので、アルバイトできない学生さんからすると神制度です。
私も奨学金約200万円が全額免除になった経験がありますので、今回はこの返還免除制度を私の経験に基づいて紹介したいと思います。
奨学金は未来の自分への『投資』
奨学金はれっきとした借金なので、安易に借りるわけにはいきません。しかし大学(院)に進学することで将来得られるであろう社会的地位のために、借金というリスクを負って自らに投資を行うことは理にかなっています。
奨学金を借りてまでその大学に行く価値があるのかどうかは、その学部・学科の就職実績を見ればある程度判断出来ます。過去の就職実績を見て、借金をしてでもその大学に通いたいと思えるのであれば奨学金という名の借金をすればいいのです。
ちなみに各大学の就職実績は各大学のHPに必ず掲載されています。注意点は、企業名だけでなく職種までしっかり確認しておくことですね (営業職、研究開発職、事務職なのか、はたまた総合職なのか一般職なのか。電話で問い合わせてもいいと思います)。超一流企業に就職した実績があっても希望職種でなければはっきり言って無意味です。
金稼ぎ目的で奨学金を借りるという手もある
さて、今回の記事の本題です。
前述のとおり、学業のための金銭的なサポートを行うのが奨学金の本来の趣旨です。しかし奨学金を金稼ぎ目的で借りるという手もあります。
- 借りた金で投資を行う
- 返還免除制度で奨学金をそのまま懐に入れる
代表的な手段がこの2点になります。①は親子どちらかに高い金融リテラシーや投資経験が無ければむしろ失敗する可能性がありますのでおすすめはしません。しかし優秀な理系学生の皆さんにはぜひ②を目指してもらいたいですね。
①がハイリスクハイリターンであるのに対し、②はノーリスクハイリターンだからです。しかも①と異なり、奨学金の本来の趣旨から全く外れていません。日本学生支援機構も公式に「返還免除制度は学修へのインセンティブ向上が目的」である旨を述べています。学業のやる気を出してもらうためにこの返還免除制度というものがあるのです。
返還免除制度の適用条件は結構緩い
以下に奨学金返還免除の概要を引用しました。
平成16年度に、大学院で第一種奨学金の貸与を受けた者の3割を上限として、在学中に特に優れた業績を挙げた者を対象に、貸与期間終了時に奨学金の全部又は一部の返還を免除することができる「特に優れた業績による返還免除制度」を導入しました。
学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価し、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。
お申込手続きは、貸与終了する奨学生が在学する大学長に願い出、大学長から本機構へ推薦される必要があります。
日本学生支援機構HPより抜粋
要は、
- 大学院で借りた奨学金のみ対象
- 第一種奨学金 (無利子の奨学金) のみ対象
- 対象者は全額あるいは半額など免除してもらえる
- 家庭状況は一切考慮されず、本人の研究業績のみで結果が決まる
- 全体の30%の人がこの制度の恩恵を受けられる
ということです。理系学生は大学院進学率が高いですから、明らかに理系学生向けの制度です。
ちなみに第一種奨学金を借りることが出来るかどうかは、大学では家族の収入の大小に影響されますが、大学院では学生本人とその配偶者の年収の大小にのみ影響されます。親兄弟の年収は全く関係ありません。
つまり学生本人が結婚しておらずかつ変に大金を稼いでいなければ、基本的には誰でも 第一種奨学金を借りるチャンスがあるのです。
第一種奨学金は無利子ですから、経済的に奨学金を借りる必須性が無くても学業優秀で借りられるようなら借りておくべきということですね。 返還免除制度を受けられなかった場合は借りたお金をそのまま全額返還すればよいのです。
またこの返還免除制度は全体の30%の人にしか適用されないということになっていますが、実は選考方法が特殊なため大学院でしっかり研究に励んでいさえすれば対象者になることは想像以上に簡単です。
以下、日本学生支援機構より抜粋した文です。
お申込手続きは、貸与終了する奨学生が在学する大学長に願い出、大学長から本機構へ推薦される必要があります。
つまり各大学毎に奨学金返還免除制度の対象者の人数が予め決まっているのです。そのため学内での選抜に勝ち抜き、大学から日本学生支援機構に推薦が行きさえすれば少なくとも一部免除は獲得できるのです。(ということを私の大学の教授が言っていました)
日本全国の上位3割に入るのはかなり困難ですが、同じ大学の同じような偏差値の人たちの中で上位になりさえすればよいのです。つまり大学内で他人よりも努力すれば基本的に間違いなく対象者になれるのですね。
もちろん各大学に割り当てられている人数は大学偏差値などに左右されているとは思うのですが、自分の大学が中堅クラス以下であっても諦める必要は全く無いのです。大学院生といっても、熱心に研究に励んでいる人は半分にも満たないというのが私の学生時代の感触です。研究室でゲームに励む、研究室にそもそも来ない、たまにしか実験や解析をしない...そういう学生は理系であってもどこにでもいるのですね。あなたが学業をしっかり頑張れば、お金という目に見える形でちゃんと自分に還ってきます。
私の経験
私もこの制度を利用して大学院2年間で借りていた211万2000円 (88000円×24ヶ月) が全額免除になりました。同じく妻も半額免除になったそうで、105万6000円の返還免除となっています。
私は大学4年~大学院修士2年の3年間、日曜日以外は毎日10~18時間くらい研究に励んでいました。これくらいやっていると余裕で学内上位の業績は修められるということですね。妻に話を聞いてみると、妻もアルバイトはやりながらも基本的にはちゃんと研究に取り組んでいたそうです。
ところで、返還免除制度の対象者となるためには目に見える形での業績が欲しいです。理学・医学・農学分野あたりだと最高なのが査読アリの学術雑誌に論文が掲載されることです。これは確実に返還免除対象者になれるくらいのインパクトがあります。分野によっては特許もインパクトがありますね。
私は大学院生の間に論文投稿までは行ったのですが、残念ながら論文受理されたのが社会人になってからでしたので、この恩恵は受けられませんでした。
(学術雑誌に投稿する論文と、卒論・修論は全く違いますので勘違いしないように!卒論・修論に比べると学術雑誌用の論文の方がはるかに高レベルです。)
また細かいところだと、国際学会・国内学会での発表実績やそこでの何らかの受賞実績が欲しいです。私は国際学会で2回、国内学会で5回くらい発表したと記憶しています。こういう積み重ねで他人を出し抜いていくのです。
批判的な人にちょっとだけ言いたいこと
ということで、大学院生がノーリスクで200万円稼げる制度を紹介してみました。
...ただ今回の記事は批判的な意見も出ると思います。「金稼ぎ目的で奨学金を借りるなんてけしからん」という意見です。ただ分かってもらいたいのが、理系学生は本気で学業に打ち込むとアルバイトが不可能になるのです。だからこそ日本学生支援機構も、家庭の経済状況によらない、研究業績に応じた返還免除制度を導入しているのです。
私は200万円返還免除されましたが、大学4年間と大学院2年間の6年間で合計700万円ほど奨学金を借りました。残りの500万円は現在せっせと返しているところです。私のような経済弱者でも研究だけに打ち込めるようにしてくれたのがこの制度なのです。
ということで刺激的な題名にしてはみましたが、伝えたいこととしては「大学院生はアルバイトよりも学業にしっかり励めよ。そのために奨学金を借りることになったとしてもちゃんと救済措置はあるぞ」ということですのでご理解をお願いいたします。
高学歴の皆さんがこれからの日本を引っ張っていくのです!!頑張っていきましょうね!!
ではでは今回はこの辺で!!