私は潔癖症です。そんな私がバイ菌を題材にした分子生物学で大学院を修了したものだから大変です。なまじ知識があるものだから私のバイ菌対策は常軌を逸しています(笑)
そんな私が微生物学の科学的観点から、足や腋(ワキ)の悪臭の対策について紹介したいと思います。よく見かけるエセ科学ではありませんので本気で悩んでいる方は試してみてくださいね。
食器用ハイター、消毒用アルコール、イソジン以外は信じるな
足やワキが匂う人は十中八九細菌が皮膚上で大量に繁殖しており、その菌が悪臭を放出しています。非常に不潔です。ワキガの人もそうなんじゃないかと思っているのですが、調べてみても科学的な知見からみたワキガの原因がイマイチよくわからなかったので断言できません。ただワキガ対策として「菌の繁殖を抑えるために制汗スプレーを使うのも効果的です」だとか「お酢には殺菌作用があるのでお酢を混ぜたお風呂に入るのもいいですよ」とかいう全く科学的でないウェブサイトばかり散見されますので、本当に効果の高い殺菌操作を行えばワキガもかなり改善するのでは??と考えています。
ではこのくさい体臭の原因菌は何を使って殺菌すればいいのでしょうか。お酢?重曹?制汗スプレー?消臭剤?全て違います。
ここに消毒薬使用ガイドラインというものがあります。東北大学大学院医学研究科などなどの感染症の専門家のお医者さんたちが策定した、本物の殺菌how to本です。このガイドラインに本物の消毒薬が列挙されているので、ここから選んで使用していきましょう。ただし本ガイドライン中では消毒薬を、殺菌能力に応じて「高水準消毒薬」「中水準消毒薬」「低水準消毒薬」に分類しています。本気で消臭対策を考えるなら中水準消毒薬以上から選びたいところです。
ちなみに本当は少し違うのですが「消毒」=「殺菌」と思ってください。
消毒液使用ガイドライン2015より抜粋
しかしここで問題があります。一般家庭では入手困難なものがほとんどです。また注意しないと人体に悪影響を及ぼすものも多数記載されています (そういった消毒薬は手術機器等の殺菌消毒に使用したりします)。特に高水準消毒薬は人体に超悪影響です。例えばグルタラール製剤だと、理科室でホルマリン漬けするのに使用されるホルマリンに似た性質を持つ薬剤です。 消臭目的で人体に使っていいものでは決してありません。
また名前は似ていますが、「過酢酸製剤」は決してお酢(酢酸)のことではありません。勘違いしないようにしてください。
ということで中水準消毒液を使用することにします。一般家庭で入手しやすい消毒液は主に3つ存在します。
- キッチンハイター (次亜塩素酸ナトリウム)
- イソジン (ポビドンヨード)
- 消毒用アルコール (約76-81%エタノール)
です。全てドラッグストアやAmazonなどで購入可能です。台所用ハイターはコンビニにすら置いていますね。
これらを適切に使用して臭いの原因菌を殺菌しましょう。ただし、キッチンハイターは他の2つに比べて人体への悪影響度が大きいので、極力使用しないほうが良いです。
※消毒薬の使用は自己責任でお願いいたします。私はこれらを用いて日常的に体を殺菌していて、体に何の不調も出ていませんが、あなたも同様だとは限りません。本当にご注意ください。一切の責任を負えませんことをここに記載いたします。最初はちょっとずつ恐る恐る使ってみてください。
キッチンハイター
適切な濃度で使用すれば上記3つの消毒薬の中で殺菌力は最も高いと考えられます。ただし人体への副作用がありますので肌への使用は「非推奨」で、顔面や股間といった粘膜部への使用は「禁止」です。可能な限り消毒用アルコールとイソジンを優先的に使用してください。
注意点は、
- 誤って吸入等で体内に摂取すると命の危険があること
- 人によっては皮膚が荒れること (皮膚への使用は禁止ではありませんが非推奨です)
- 漂白作用があるため布製品に触れると布が脱色してしまうこと
- 金属腐食性があるので金属に触れると金属が錆びること
- 酸素系漂白剤と混ぜたり、お湯で希釈したりすると危険な塩素ガスに分解すること (使用する際は絶対に換気しながらです!)
- 水で希釈して使用するのが正しいのですが、作り置きしておくと分解してNaCl (ただの塩)になってしまい、殺菌作用を失うこと
- 特有のにおいがあること
- 水で希釈するとほんのすこし発熱するので初めてだとびっくりすること
です。 希釈の目安はハイターの容器に書かれてあります。
私は潔癖症なので週に1回程度、ハイター希釈液を手にとって全身に塗りたくって体を洗うのですが、危険なのでそんな変態的なことはしなくていいです。(私は完全自己責任でやっています)
有害度が高いのでなるべく他の2剤を使用してほしいのですが、顔、股間部分から離れた部分を洗う分には肌荒れを除けば比較的安全に使用できます。悪臭のひどい足は希釈したハイター液に数分間浸けこむことで科学的にほぼほぼ無菌になります。
イソジン (ポビドンヨード)
イソジンは手術部位に塗って消毒するのに使うことから、科学的にも殺菌作用は折り紙つきです。副作用が他の2剤に比べるとマイルドなことから、股間や顔面、傷口といった粘膜部分への使用が可能です。茶色く染まってしまうので、使用後はシャワー等で洗い流す必要があるのがデメリットです。
やや高価なのですが、大量に用意できるようでしたら、イソジンで全身を洗うというのが最も人体への悪影響は少ない殺菌方法でしょう。脇や足以外の全身から悪臭が漂っている方はご検討ください。
また飲み込まなければ口の中に入れても大丈夫ですので、イソジンを使ったうがい薬も販売されています。口臭対策もできる優れた薬剤です。
こちらはスタンダードなイソジン液です。
こちらの商品は洗いやすいように、泡立つようになっています。洗いやすいので最もおすすめです。全身洗うのでしたらこれ一択ですね。
消毒用アルコール
粘膜を除いた皮膚への使用は問題ない、ということになっている消毒液です。無菌状態で操作しないといけない環境では消毒用アルコールで手指を消毒したりしますので、科学的にも殺菌の信頼度は非常に高いです。これを足やワキに塗りたくると、匂いの原因菌をほぼ殺滅できます。
注意点は
- 脂溶性 (油を溶かす) なので皮脂が全て持っていかれ、頻繁に使いすぎると肌荒れすること
- キッチンハイターやイソジンと異なり、水で薄めると殺菌能力が消失するので、濡れている状態や濡れている場所には一切使用出来ないこと
- 粘膜 (股間や眼球、傷口) に触れると激痛が走るためそれらの部位に使用禁止なこと
- お酒なので、うっかり飲んでしまう(!?)と車の運転が禁止になること
- 脂溶性なのでフローリングに付着するとワックスが落ちること
- 純粋な消毒用アルコールは酒税がかかっているので高く、酒税がかからないようにするために添加物を入れている消毒用アルコールは臭いこと
- 下戸の人は炎症反応が起きることがあること
です。消毒用アルコールはスプレーとして使うのが簡単でおすすめです。消毒用アルコールを塗りたくると殺菌はされるはずですが、匂いの原因物質がなくなるわけではないので、アルコール消毒したあとにお風呂で体を洗うのが効果的な悪臭対策です。ちなみにお風呂に入るとまた体に雑菌が付着するので、風呂上りに再度アルコール消毒しましょう。
ハイターやイソジンとの使い分けですが、ハイターやイソジンはお風呂時に、エタノールはそれ以外の場面で使用する、といった使い方がベストでしょう。それぞれの消毒薬で菌の種類によって殺菌の得手不得手がありますので併用することが推奨されます。
私はたまに家族サービスで温泉に行くのですが、温泉は非常に不潔なので温泉後はすぐに足だけでもエタノール消毒しています。そして帰宅したらお風呂に行って全身をハイター消毒しています。変態ですね。このような使い方をしています。一般の方はハイターは使用しない方がよいので、イソジンで洗うことになるのでしょうか。
ちなみに消毒用アルコールは酒税がかかっているものとかかっていないものが売っています。純粋にアルコール(エタノール)と水だけのものは、酒税がかかっているので高いのですが使用後は完全に無臭です。酒税がかからないようにするために(飲めないようにするために)添加物を入れている消毒用アルコールは安いのですが商品によっては使用後、添加物の独特の匂いがしますのでどちらを買うかは懐具合と相談してください。
↓純粋な無臭の消毒用エタノール
↓私が色々試して行きついた、匂いがかなり軽減されている酒税がかかっていない安価な消毒用アルコール (5Lなので注意です)
最後に
今回紹介した薬液を体に塗りたくる行為を何回か繰り返し、それを定期的に行うようにすれば理論上はあなたの体から悪臭はなくなります。ところが実際はそんなにうまくいかないことがままあります。
衣服、靴下、靴、家の床にすでに雑菌が繁殖しまくっているからです。
これらの消毒については今後、記事にしたいと思います。でも本気で悩んでいるなら本記事で取り上げた消毒薬を使ってみてもいいのではないでしょうか。ただしハイターは非常に危険ですので可能ならイソジン等で代用するようにしてください。選択肢として記載しましたが、人体への使用は非推奨です。
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ホントの最後に
この記事を読んでくれている親御様へ。人の皮膚には黄色ブドウ球菌などの細菌がいることが普通です。この常在菌は他所から来た菌を排除する等の良い役割を持っていることもあり、消毒はその細菌叢(さいきんそう)バランスを崩す恐れのある行為です。
大人になるにつれてそのバランスが強固になるので消毒してもほとんど問題になりませんが、小さな子どもだと免疫学上問題になることがあります。足やワキ程度の局所なら問題ないですが、全身消毒するような行為はお子様にはやらないであげてくださいね。